ディエゴ・シン

個展「The Indirect Man」

The Indirect Man at Night 2006 oil on linen 35.6 × 27.9 cm ©︎Diego Singh

<作品紹介>
ディエゴの作品はキュレーターのドミニク・モロンによって以下のように評されています。
「自画像としても機能している想像的別世界を作り出し、芸術の伝統が持つ可能性をラディカルに押し広げつつあるー作品は鑑賞者を作家の自己神話的な策略へと誘い込み、現実に構築されたセルフアイデンティティーと、架空の魔法とを隔てる境界はこの上なくアンヴィバレントである。」

シンのペインティング、ドローイング、彫刻作品において、セルフ(自己)とは、ジェンダーも史実性も絶え間なく流動している中で、吟味されたり演じられたりするよう開かれている、テリトリーとして名付けられています。一方、アイデンティティーとは、生まれもっての性質を明らかにするために追求するある種の戦略を成功させる可能性として考えられます。シンにとって、ポスターとして通用するペインティング、あるいは彫刻作品の中に参照されるペインティングは、それらが融合された概念としてまとまっていく交わりの試みです。

 

<展覧会について>
『インディレクトマン』では、これまでモダニストたちが語らい、マスメディア言語がとりあげてきたものを統合的に構築する役割として自画像が登場します – ズームやフェイドアウトなどの映画的手法、ミニマリズム、シュールリアリズム、ポップ、ファッション、プリミティズム、などなどー。ペインティングは、色彩として、またサインとしても、全て黒を主要素として用いています。夜の光景であるかのように顔やフォルムは抽象的になり、題材はズームされ、切り取られ、描かれた目は動き出し、グラムロックやドラッグカルチャー、ホームレスの様相を引用しながら増殖していきます。一方直接的で、やりすぎなアンドロギヌス(両性具有)や悲劇の雰囲気を漂わせたダイレクトな表現は回避されています。
いくつかの作品においては、キャンバスはビニール袋のように、ほとんどオブジェのような形をしています。マスクや、ミニマリストが用いるようなネオン構造と二つの目、口が、クローズアップされて描かれる作品もあります。自画像が描かれた全ての作品は、「認識ではなく推測の対象、即時的で当然の直感ではなく、文化の対象」(注1)です。シンのプロジェックトにおいては、自画像として描かれた像もまた自画像画家その人も、常に仮想の人格をとどめており、作家にパフォーマンス的な役柄を与え、鑑賞者は提案されたヒントを読み取ることで、物語を紡ぎ出します。
本展では、等身大でほぼ裸の(手袋とベルトだけを身に着けた)男性の彫刻も出展されます。それはいかにも伝統的な彫刻のポーズで腰掛けています。そのプロポーションに対して大きすぎる頭は、バロック風のかつらにもロック歌手のヘアスタイルにも見えますが、ペイントされた鉄のスティックによって、不安定に支えられています。

注1)ジャック・デリダ「Memoirs of the Blind, the self portrait and other ruins」ルーブル美術館、1990年より引用

 

作家プロフィール

ディエゴ・シン

ディエゴ・シンはアルゼンチン生まれ。ケネディー大学で社会コミュニケーション学を学んだ後、同大学院美術科を修了。2003年から04年にかけて、マイアミのMiami Light Projectにてキュレーターとして活動し、Visual Arts Programをディレクションしました。現在マイアミを拠点に制作、またマイアミとブエノスアイレスに拠点をもつキュレーション・プロジェクトである「Central Fine」を立ち上げました。小山登美夫ギャラリーでは3度の個展を行っています。

主な展覧会として、「Table for One」(2011年、小山登美夫ギャラリー、東京)、「Unimodern Gondolieri」(2012年、Various Small Fires、ロサンゼルス)、「Embarrassed by Loneliness」(2012年、Mendes Wood、サンパウロ)、「Submarine Uploading」(2012年、Annarumma Gallery、ナポリ)、「Le Ragioni della Pittura」(2013年、La Fondazzione Malvina Menegaz、イタリア)、「Recent Acquisitions」(2014年、ペレス・アート・ミュージアム・マイアミ)、「Prospect」(2014年、サンディエゴ現代美術館)、「Locally Sourced」(2015年、アメリカン大学美術館、ワシントンD.C.)などがあり、シンの作品はサンディエゴ現代美術館、ペレス・アート・ミュージアム・マイアミ、 the De La Cruz Collection(マイアミ)などのパブリックコレクションとして収蔵されています。

ディエゴの作品はキュレーターのドミニク・モロンによって以下のように評されています。「自画像としても機能している想像的別世界を作り出し、芸術の伝統が持つ可能性をラディカルに押し広げつつあるー作品は鑑賞者を作家の自己神話的な策略へと誘い込み、現実に構築されたセルフアイデンティティーと、架空の魔法とを隔てる境界はこの上なくアンヴィバレントである。」

アルゼンチン生まれ
1999年 BA, Comunicaciones Sociales, Unversidad Kennedy、アルゼンチン
2000年 MA, Direccion de Arte Asociacion Argentina de Agencias de Publicidad (AAAP)、ブエノスアイレス、アルゼンチン
Art History Kennedy Universy、アルゼンチン