佐藤翠

個展「マイ・プレシャス・ルーム」

Closet with flower carpet 2012 acrylic on cotton 193.9 × 259.1 cm ©Midori Sato

<作品紹介>
佐藤 翠は街のブティックやショップ、雑誌でみた美しい服や靴、クローゼットやシューズラックなどを描きます。等身大のクローゼットを描いたペインティング、雑貨や建物等をモチーフとするたくさんの小品が散りばめられたインスタレーションなど、佐藤の作品を目の前にすると、それらが構築する世界がもつ抗いがたい幸福感と魅惑によって、その中へ瞬時に、そして心地よく吸い込まれるようです。そして作品の細部へ目をやると、大胆なタッチと緻密な描き込み、また意図的な塗りムラなどが、豊かな色彩を紡ぎあげていることに気付きます。
一昨年から昨年春にかけて滞在したパリのアーティスト・イン・レジデンスで制作した、絨毯をモチーフとしたシリーズ(”Carpet –Paris I-”、 ”Carpet –Paris 2-”)では、綿布を木枠に張らず、直接壁に展示しています。カーペットの模様を同じテキスタイルである綿布に描く。そのイメージは忠実な再現ではなく、様々な筆触と色の戯れによって作り上げられています。この「生地」の表層でなされる触覚的な表現は、身体的な感覚をともなった鑑賞を誘います。
日常のなか、あるいは旅の途中でみかける美しいもの、丁寧にこだわって作られたもの、想像を超える異文化。それらの素晴しいもの出会ったときに受ける衝撃、喜び、高揚を覚えておきたい。留めておきたい。そうすることによって、それらとは対局にある気持ちの時に自分を奮い立たせることができる。制作の動機について佐藤はそう話します。彼女が感じ、画布に定着された幸福感が鑑賞者へと受け渡されるということ。それはきわめて原初的な、時間を超えた絵画というもののもつ素晴らしさといえるでしょう。

 

<展覧会について>
本展は「クローゼットのある部屋」をイメージし、大きなクローゼットや絨毯をモチーフとしたペインティングや、パリで見つけたタイルやレース、刺繍などの装飾のパターン、また身近にあるお気に入りのものを描いた作品を展示します。また小さなペインティングや蚤の市で見つけた額を使用し、ひとつの部屋のような空間をつくりあげる展示となります。是非ご高覧ください。

 

作家プロフィール

佐藤翠

色とりどりの服が掛かったクローゼット、高いヒールの靴が並ぶシューズラック、鮮やかな花々。佐藤翠の絵画は、女の子の憧れが詰まった宝石箱のようです。画面を眺めていると、大胆で素早いタッチがモチーフの輪郭を溶かし、具象性と抽象性が共存しつつ鮮やかな色彩と卓抜な構成が強い魅力を放っていることに気づきます。美術史家・美術評論家の高階秀爾氏も指摘する通り、佐藤の作品は、絵画の魅力、喜びに溢れ、「ほのかな、かすかな官能性の香りがいわば隠し味のように重なって、比類ない豊麗な世界」(高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』(講談社)を生み出しています。

佐藤翠は1984年、愛知県生まれ。2008年に名古屋芸術大学絵画科洋画コースを卒業。在学中にはディジョン国立美術大学(フランス)へ交換留学。2010年に東京造形大学大学院造形学部で修士課程を修了しました。現在、平成29年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてフランスにて研修中(-2018)。
作品は、芥川賞受賞作家・中村文則の小説『去年の冬、きみと別れ』(2013年、幻冬舎)の装画や、松永大司の映画『トイレのピエタ』(2015年)の劇中に使われたり、『花椿』(資生堂)では原田マハの短編小説と挿画でコラボレーションをするなど、その活躍の場を広げています。「VOCA展 2013 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(2013年、上野の森美術館、東京)では大原美術館賞を受賞、作品は同美術館に収蔵されました。2015年には資生堂ギャラリーでのグループ展「絵画を抱きしめて Embracing for Painting -阿部 未奈子・佐藤 翠・流 麻二果展-」に出展。2016年は、8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryにて小山登美夫ギャラリーでの3度目の個展「Secret Garden」を開催した他、「あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ」にも参加いたしました。