小出ナオキ

個展「Maternity Leave」

©︎Naoki Koide

<作品紹介>
小出ナオキは、自分自身や彼を取り巻く身近な人々、つまり関係性の深い人物を主なモチーフとした彫刻や絵画作品を中心に制作しています。2004年の個展「二人の浴室」では、親密な関係を象徴する寝室や浴室に配されたカップルが主役になりました。2006年の「Marriage」では、結婚式の衣装を身にまとった夫妻の立体作品、そしてそれを実際に式場に設置して撮影した家族のポートレート写真を展示。そして2008年の「In These Days」では、引っ越しして新しい家ができたこと、また他界した家族がモチーフとして登場しました。
このように小出の作品は、つねに個人的な環境に着想を得ていますが、閉じた世界という感覚は与えません。やすりで削られたFRP(強化プラスチック)の作品のつるりとした質感、そのどこかノスタルジックなくすんだ色合い、人物や動物たちの、なんともいえず茫洋とした表情。これらが持つほんわかとしたかわいらしさ、コミカルさ、甘美さに混じる不気味さや不安に、鑑賞者は引き込まれていきます。子供のころの遊びの延長にあるかのような、ある種の本質的な力をもつ小出の作品は、詩情にあふれ、自伝的でありながらも鑑賞者の記憶を刺激するような魅力をもっています。

 

<展覧会について>
本展は、作家が初めて使用する素材であるセラミックの作品を中心に、ペインティング、ドローイングなどで構成される予定です。展覧会のタイトルは「Maternity Leave」(産休)で、テーマは新しい家族の登場。母、父、娘のモチーフが中心となります。
信楽の「滋賀県立陶芸の森」で制作されたセラミック作品には、妊婦のモチーフの2mに近い大作や、母・父・娘の彫像、雲をモチーフにした作品などが含まれます。これまで使ってきたFRPとセラミックの違いについて、「FRPは自分がやったことが100% 結果になるのに対して、セラミックは素材や環境の制約があり、また窯を開けてみないとわからない。自分の痕跡以外のものとキャッチボールをしながら試行錯誤した」と話す小出の、新たな試みを是非ご高覧ください。

 

作家プロフィール

小出ナオキ

小出ナオキは1968年、愛知県生まれ。1992年に東京造形大学造形学部美術学科を卒業。現在は千葉県を拠点に制作活動を行っています。
2003年、岡田聡氏キュレーションによるグループ展「マジック・ルーム」(Project Room / 小山登美夫ギャラリー)に出展後、小山登美夫ギャラリーでは5度の個展を行っています。
その他の主な展覧会に、「カフェ・イン・水戸」(2004年、水戸芸術館現代美術ギャラリー、茨城)、「マジカル・アート・ライフ」(2006年、トーキョーワンダーサイト渋谷、東京)、「Fiction@Love」(2006年、MOCA Shanghai、上海、中国)、「neoneo Part1 [BOY]」(2009年、高橋コレクション日比谷、東京)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」(2009年、新潟)「Paul Clay」(2011年、Salon 94 Bowery、ニューヨーク)「高橋コレクション展 マインドフルネス!」(2013年、鹿児島県霧島アートの森、姶良郡、鹿児島 [ 札幌芸術の森美術館、札幌、北海道 へ巡回 ])などがあります。

小出ナオキは主にFRP(合成樹脂)、セラミック、木などを用い、愛らしくもどこか不気味で不思議な立体作品で、雲のお化けやドクロなど、異界のものたちや、自身とその家族を作品化してきました。小出の作品について、美術評論家の森口まどか氏は次のように書いています。

「日常や自己の内なるところから着想する在り方は、小出にかぎらず、今日のアートシーンにあっては定跡といっても良いほどだと思うが、その場合、微温的な暮らしをそのままかたちにしても作品としての強度は持ち得ない。小出ナオキの場合、臆面もなく家族や身近な人たちとの出来事を語りながら、センチメンタリズムに堕ちず、事の本質を見据えるふてぶてしさが、アーティストとしての核をなしているように見える。」(森口まどか 「小出ナオキの現在性」『Maternity Leave』小山登美夫ギャラリー、2012年)

また、小出は滋賀県立陶芸の森で滞在制作の機会を得たこともきっかけに、2009年頃から彫刻の主な素材をFRPからセラミックに変えました。FRPにはない、いわばセラミックという素材特有の”裏切り”を、小出は「まるで、子どもが産まれてくる前の父親に産まれた後の生活が想像できないような、そして、産まれて初めてその意味がようやく理解できる感じと似ています。制作する意味、が少し分かってきたような気がしている。」(小出ナオキ「主題」『Maternity Leave』小山登美夫ギャラリー、2012年)と語ります。小出の作品には、詩情にあふれ、自伝的でありながら、鑑賞者の記憶を本質的に刺激するような魅力をもっています。

1968年愛知県生まれ
1992年東京造形大学造形学部美術学科卒業