柏原由佳

個展「—真ん中へ」

内 innen 2010 oil on canvas 100.0 x 130.0 cm ©Yuka Kashihara

<作品紹介>
柏原由佳は、実在する景色と内的な想像の空間が、まるでとても目の細かい織物のように紡ぎ上げられた風景画を制作しています。その背景には、日本の大学を卒業後、ドイツで進学し制作を続けている柏原の、「距離」というものへの興味があります。ドイツと日本の物理的な距離、人やそれぞれの文化との精神的な距離、また日本人として、ドイツ人としての自分同士の距離。これらを経験しながら、ドイツと日本の行き来を続けること。それは慣れ親しんだ場所への郷愁とその異化など、制作につながる視点の変化をもたらしたのち、次第に柏原に自分自身と深く向き合わせ、「山」「穴」「湖」といった、内省的な思索をシンボリックに示すようなモチーフとして表現されるようになりました。
柏原のペインティングは、油彩で何度も薄い層を重ねて描かれることにより、これらのモチーフを豊かにする独特の雰囲気と色の響き合いを与えられています。これは学部時代に学んだ日本画の技術を、油画の技術と織り交ぜて制作することによって可能になっています。ドイツで伝統的なヨーロッパの絵画技法を学んだ柏原は、単に異なる伝統の融合を試みるのではなく、既存の分類を批判的にとらえたうえで、彼女自身の絵画、また彼女がいう「自分の個人の歴史」の表現に真摯に取り組んでいます。

 

<展覧会について>
本展では、上述した「山」「穴」「湖」がキーワードとなる新作ペインティング、約10点を展示いたします。これらの作品の制作の中心となるものについて、柏原は以下のように話します。

自分自身を知るために、「穴を掘る」というような作業が続いてきました。外にあるものと中にあるもの。その境界線はどこにあるのか。自分が内側空間にいるのか外側空間にいるのか、内側だと思っていた場所は実は外側で、また外だと思っていた場所が実は内なのかもしれない。またそこはこれから入っていく入り口なのか、それとも自分が出てきた出口なのか。

このような柏原の問いは、見る度に様々なイメージや記憶を呼び起こすような彼女の作品を通して、鑑賞者にも委ねられているといえるでしょう。本展は、これらのペインティングが日本において初めて展示される個展となります。是非ご高覧下さい。

 

作家プロフィール

柏原由佳

柏原由佳は1980年広島県生まれ。2006年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、渡独。2012年にはVOCA展に出展、佳作賞と大原美術館賞を受賞しています。ライプツィヒ視覚芸術アカデミーを2013年に卒業し、2015年同アカデミーマイスターシューラーを取得(Annette Schröter教授に師事)。主な個展に、「借景」(バウハウス・デッサウ財団研究員Torsten Blumeによるキュレーション、バウハウス・デッサウ、ドイツ、2008年)、「最初の島 再後の山」(大原美術館、岡山、2016年)などがあります。小山登美夫ギャラリーでは2011年、2012年、2013年、2016年と4度の個展を行っています。

1980年 広島県生まれ
2006年 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2012年 平成24年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてドイツにて研修(-2013年)
2013年 ライプツィヒ視覚芸術アカデミー卒業
2015年 マイスターシューラー取得(Annette Schröter教授に師事)、ライプツィヒ視覚芸術アカデミー

現在、ドイツを拠点に制作活動